タイトルを見た方、「スペインの居酒屋では物を食べてはいけないの?」と勘違いされるかもしれませんが、そうではありません。
「居酒屋」をスペイン語で taberna といいます。この単語の発音が「タベルナ」なので、思いついたダジャレ(低レベルですいません)をタイトルに付けたかっただけなのです。
さて、taberna ですが、これは「料理も出す飲み屋」のようなものです。基本的にお酒を飲むところですが、料理を出すところもあります。
taberna は「居酒屋」と辞典にはよく定義されていますが、日本の居酒屋とは少し違い、どちらかというとバル(bar)に近い感じです。
bar と taberna の違い
で、bar と taberna、どんな違いがあるのでしょうか。定義や語源などを調べてみました。
taberna と bar の定義
diccionario SALAMANCAにおけるそれぞれの語の定義は以下の通り。
bar – Establecimiento donde se sirven principalmente bebidas que se consumen ante el mostrador.
このように、定義的にはほとんど同じですね。ただ、bar の場合は、mostrador (カウンター)の前で飲み物を飲むという違いが定義中にはあります。なぜかというと、後に述べる bar の語源が関係しているのでしょう。
taberna の語源
「居酒屋」を英語で tavern といいますが、この語の語源は、ラテン語の taberna です。ラテン語の taberna は「宿」、「居酒屋」、「小屋」などを意味するようです。
ラテン語の taberna は、スペイン語と全く同じですね。意味的にもほとんど変わりませんね。実際、スペイン語の taberna の語源もやはりこのラテン語から来ているようなのです。
スペイン語はラテン語から派生したロマンス諸語に属しますので、このあたりの事情は納得できます。
少し気になったので、同じロマンス諸語に属するイタリア語ではどうなのか調べてみました。スペイン語とイタリア語はお互いに共通する部分が多いのです。
で、イタリア語では、taverna という語があるのを見つけました。こちらは、発音としては「タヴェルナ」です。ちょうど、スペイン語と英語の間のような発音ですね。イタリア語の taverna は、「居酒屋」とか「大衆食堂」のような意味です。スペイン語の taberna とほとんど同じ意味ですね。
このように、スペイン語の taberna は、ラテン語由来であり、ほかの言語にも似たような語があるのがわかります。
bar の語源
それでは、スペイン語の bar、すなわち「バル」はどうでしょう。
bar は、英語とスペイン語で、発音は違いますがスペリングは同じです。
英語の bar は、もともと「棒」という意味でしたが、「バー」の意味を持つようになったのは、バーのカウンターが長い棒状であることからなのです。ですから、英語の bar には「棒」と「バー」の両方の意味があるのです。そして、bar の起源もラテン語で、「棒」を意味する barra から来ています。
ここで面白い発見があります。
スペイン語では、「バル」と「棒」とで異なる語を使っているのです。
スペイン語では、「棒」を意味する語として barra を使います。これは、ラテン語で「棒」を意味する barra と同じですね。しかし、英語とは異なり、スペイン語において barra は、「棒」や「カウンター」を意味する語としては使われますが、「バー」を意味する語としては使われないのです。その逆も然り。bar が「棒」を意味することは普通はなく、もっぱら「バル」の意味で使われます。
英語ではbar は「棒」と「バー」の両方の意味を持ちますが、スペイン語では bar は「バル」、 barra は「棒」と使い分けるのですね。
なお、スペインにおける「バル」は、日本の「バー」とは趣が異なります。
日本の「バー」は、大人だけが楽しめる「お酒をたしなむ場所」ですが、スペインの「バル」は、どちらかというと「大衆食堂」のような位置づけです。子供も含めた家族全員で楽しめる場所なのです。
まとめ
さて、これまで taberna と bar の違いについて調べてきました。で、結論ですが、両者にはほとんど違いがないようですね。ただ、bar の方は「カウンター」の前で飲み物を楽しむという前提があるようです。これは上に述べた語源に関係しているのでしょう。
ただ、現代における使われ方や意味合いはtaberna と bar とで大差がないようです。両方ともほとんど同じような意味で使われます。使う頻度としては、bar のほうがよく使うようですね。